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脳科学者・茂木健一郎氏、実業家・堀江貴文氏、JAAF RunLinkチーフオフィサー・早野忠昭によるトークセッション

2018年11月13日(火)市民マラソン大会の統括・支援、個々人のライフスタイルに合わせたランニングを楽しめる環境・機会を提供することを目的とした新プロジェクト「JAAF RunLink」記者会見を開催しました。こちらではその中で行われた、脳科学者・茂木健一郎氏、実業家・堀江貴文氏、JAAF RunLinkチーフオフィサー・早野忠昭によるトークセッションの模様をご紹介します。

ランナーと
ライフスタイルをコネクトする。
JAAF RunLinkのビジョン

ランニングを
ライフスタイルに浸透させる

早野 ■
お二人とも普段からランニングをされていると伺っておりますので、まずは茂木さんのランニング・スタイルについてお聞かせください。
茂木 ■
今朝も10キロ走ってきました。東京マラソンにもエントリーしているので、本番までに体重をあと5〜10キロ減らさないといけないのですが、なかなか…。あれ?堀江さんは走るんですか?
堀江 ■
東京マラソンですか?
茂木 ■
今回は出走しないの?今からエントリーしようよ。
堀江 ■
いやいやいやいや。
茂木 ■
ちなみに、今日は走りました?
堀江 ■
今日は走ってないですね。明日走ります。
茂木 ■
彼と僕の最大の違いは、彼がトレッドミルだということです。僕はロードワークなので。
早野 ■
実は、僕もトレッドミルなんです。
茂木 ■
え、なんで?外の方が楽しくないですか?
早野 ■
韓国ドラマを見ながら走るので「45分間休まない」というのがいいんです。
堀江 ■
それ、僕も同じです。
茂木 ■
僕は逆ですね。堀江さんはね、一緒にラジオの収録をしているときも、本番中に「そうですよね、茂木さん」とか言いながら、手元ではスマホをいじっているんですよ。今の人って、常にスマホとかデジタル機器に囲まれているじゃないですか。僕は今日、脳とランニングについて話そうと思っているのですが、ランニングの時くらいデジタル機器から離れる方が脳にいいんですよ。「デジタル機器絶ち」が必要です。
早野 ■
なるほど。ちょっと反論あるでしょう、堀江さん?
堀江 ■
別に反論はしません。僕は単に時間がないので、時間があるなら寝ていたいだけです。寝る時間をできるだけ長くしたいけれど、朝はスマホチェックもしたいし、ランニングもしたい。僕はタバタ式トレーニング(20秒全力疾走+10秒レストを1セットとして8セット)を実践しています。レストでスマホやって、たまにジョギング、みたいな感じで1時間くらい過ごすこともあります。
茂木 ■
僕は3年ほど前の東京マラソンで、飯田橋のあたりで堀江さんに抜かされましたから。結局、20分か30分負けたんです。やるときはやるんですよ、彼。すごいですよね。トライアスロンもやるし。ただ重要なのは、寝ているときではなく、起きていて脳がアイドリングしている時だけ活動する「デフォルト・モード・ネットワーク」という回路がある、ということです。この回路が働くと、記憶の整理やストレス解消ができる。堀江さんも、できれば起きているときにボーッとした方がいいのですが。
堀江 ■
いや、したくないですね。ボーッとするくらいなら寝ます。

ランナーの多様性、
ランニングの裾野を広げるということ

早野 ■
次の質問に入ります。「ランニング人口2000万人を目指します」と言ったのですが、我々の力だけでは難しいと思っています。皆さんのお知恵をお借りしたいのですが、なにかいい方法はありませんか?
堀江 ■
“まじめ君”が多いですからね。僕は、同じくアドバイザーを務めているJリーグの「Jリーグ憲章」みたいなのから、「競技」という言葉をなくして「スタジアム」に変えました。日本人は、どうしても「体育」とか「競技」という方向に行きがち。それはたぶん、教育の問題だと思いますが、運動が苦手だった人は「体育」という言葉にネガティブなイメージを持っています。かけっこで遅かった、とかね。僕もかけっこが遅い方だったので、すごくイヤなイメージがありました。でも、大人になってトライアスロンをやっていても、誰かに揶揄されることはありません。それほど速くはないけれど、恥ずかしいこともないし、楽しんでやれています。つまり、そこかな。
茂木 ■
日本陸連というエリート競技者の組織が「JAAF RunLink」を作った、というのは大きいと思います。正直、今までは、日本陸連が我々みたいなランナーを相手にするイメージがありませんでしたから。日本陸連登録=エリートの証で、僕らに対しては「おまえら勝手にやってろ」みたいな感じ。その日本陸連が、僕みたいな遅いランナーと(ちなみに4時間40分ぐらいですけど)エリートランナーを、一緒に扱ってくれる雰囲気があるのがうれしくて。頂を高くするためには裾野を広げないと、ということですよね。
堀江 ■
でも、今日も10キロ走ったんでしょ?それは、世間一般からするとガチ勢です。10キロ走れない人とか、走ったことがない人とか、自分は走りが億劫だと思っている人って、けっこういますよ。
茂木 ■
えー、俺って、ガチなんですか?
堀江 ■
けっこうガチなほうだと思います。普通の人、東京マラソン出ないですもん。そもそも東京マラソンを4時間台で走れるのは、世の中の平均からするとガチ勢です。
茂木 ■
富士山でいうと5合目ぐらい?
堀江 ■
もっと上です。
早野 ■
東京マラソンは6時間40分ぐらいまで大丈夫ですよ。
茂木 ■
日本陸連にとっては、裾野を広げるためにも、こういうのってすごくいいと思うんですよ。
早野 ■
日本陸連の傘の中の下でこうしたことができるのは、東京マラソンを運営する僕らとしては何年も夢見ていたことです。
茂木 ■
鈴木長官がバルセロナで金メダルを獲ったときの泳ぎ、すごかったじゃないですか。あの泳ぎに憧れて水泳をはじめた人がいるわけで、それは裾野が広がった、ということですよね。エリートのアスリートから裾野まで、ずーっとつながっていることが大事だと思うんです。
早野 ■
堀江さんに伺いたいのですが、堀江さんにとってランニングとは何でしょう?
堀江 ■
僕にとってはトレーニングというか、これ以上太らないためのものです。トライアスロンやマラソンのレースに出たいので、最低限、それに出られる体でいようと。
茂木 ■
お酒をもっと減らせばいいじゃない?
堀江 ■
それができるようなら苦労しません。だからランニングをするんです。また、東京マラソンに出られるくらいの体にしておかないと、年をとったときに足腰にくるでしょう。歩けなくなると人間は急速に衰えてしまいます。「予防医療普及協会」というのをやっているのですが、健康で長生きするためには足腰を鍛えて動ける力を維持することが重要で、そのためには普段からのトレーニングが役立つんです。
茂木 ■
これから高齢化社会をむかえる日本にとって、認知症の増加は非常に大きな問題です。定期的に運動している人は認知症の発症の確率が下がる、というエビデンスもありますから、ほんとに大事なことですよ。
堀江 ■
もう一つ大きいのは、走るのって、コストがかからないんです。
茂木 ■
こういう堀江さんみたいなお金持ちから普通の方まで、全員走れるんですよ。
堀江 ■
そうです。僕が何でトライアスロンをやっているかというと、トライアスロンって、高い自転車買うと速くなるからです。
茂木 ■
ちょっと待った、資本家の論理ですね。トライアスロンは金持ちじゃないとできないの?
堀江 ■
できますけど、100万、200万の自転車を買うと、ほんとに速くなるんですよ。
茂木 ■
そんなに高いんですか。
堀江 ■
カーボンファイバーでできた自転車があるんです。それに対してランは、自分の足にフィットするシューズを履くくらいでしょう。貧富に関係なく、走るのは自由ですから。
茂木 ■
堀江さんが言うと、いろいろとしみじみしますね。
堀江 ■
だれでもできるよ、っていうのがすごく大事なんです。
茂木 ■
前回の東京オリンピックで、アベベ選手が裸足で走りましたよね。確かに、堀江さんみたいなお金持ちじゃなくてもランニングはできる。これはいいところですね。

ランニングから生まれる
人・コト・つながり

早野 ■
お二人にはアドバイザーになっていただいたわけですが、最後にRunLinkのアドバイザーとしてやってみたいことを伺いたいと思います。一言では難しいかもしれませんが、フリップに書いていただけませんか。これをやったら2000万人を達成できる、というのがあればお願います。

ランニングから生まれる 人・コト・つながり

茂木 ■
「脳に良いラン」
先ほども言いましたが、認知症の予防になります。そしてもう一つ、走っている間に「デフォルト・モード・ネットワーク」が活性化してストレス解消になり、ひらめきや発想が生まれるんです。僕は、走っている間に思いついたプロジェクトや研究所のアイデアがいっぱいあります。本当は、堀江さんみたいに忙しいビジネスパーソンにこそ走って欲しいと思います。
堀江 ■
「会社やサークルなどで定期的にランイベント」
会社やサークルなど、普段の場で定期的にランをできるイベントを開催してはいかがでしょう。日本人に限らず、人間って大喜利をやると応答してくるんですよ。お題を提示して、それに対するリアクションを求めると、けっこう突っ込んでくる。例えば、アニメや漫画でも、コミックマーケットに出るような作品には「二次創作」が多いんです。絵がうまい人はいっぱいいるので、オリジナル作品を生み出すのは難しくても「こんな感じの絵を書いてみてって」「こういうキャラクターでこういう絵を書いてみてって」というお題を出すと、めちゃくちゃ集まる。ランも同じことです。みなさんの中で、ランをするシチュエーションがイメージできていないと思うので、それをイメージできるイベントを企画してみてはいかがですか。
茂木 ■
大事ですね。
堀江 ■
みんな真面目なので、お題を与えるとそれに対して反応してくると思うんです。こんなシチュエーションでみんなランやって、こんなに体が健康になりました、とか。そういうのがあるといいんじゃないですか。
茂木 ■
とてもいいと思います。ちなみに、僕の最小ランニングは自宅から近くのコンビニまでの片道1分。これでいいんですよ。
堀江 ■
僕が初めてホノルルマラソンに出たのは成り行きでした。取引先の部長がマラソンオタクみたいな人で、毎年ホノルルマラソンに誘われていたんです。「いや、おれ走んないですよ」と断り続けていたのですが、ついに逃げきれなくなっちゃって。飲み会の席で「行きます」って言って、その場で申し込んでしまったんです。100メートルも走ることなく、ノー練習のまま出走したので、7時間ぐらいかかりましたけどね。
茂木 ■
立派ですよ。
堀江 ■
最後の20キロぐらいはずっと歩いていましたが、ほとんど死にかけました。
早野 ■
お二人の話を聞いていると普通の人っぽくていいですね。
茂木 ■
そうでしょう。だから誰でも走れるんです。
早野 ■
そうです、そういう話をお聞きしたいんです。陸上の専門家からアドバイスを聞くのより、そういうことなんです。
堀江 ■
嫌だなぁ、と思うのは、僕と同じ世代の経営者みたいな奴が、Facebookのタイムラインに「初めてマラソンに参戦しました」と書きつつ「いやー、初めてのマラソン、サブフォー達成できませんでした。もっと練習しないと」だって。こういう人たちが敷居を上げているんだと思いましたよ。マラソンに参戦するならサブフォーを目指さないといけないとか、頑張ってサブスリーまでストイックに頑張らないといけない、みたいに思わせるのがダメ。サブフォーってすごいことなのに、それをあたかも「俺は昔運動やってたから、サブフォーぐらい当たり前だよ」みたいな感じで書く奴らがいる。だから萎縮しちゃうんですよ。
茂木 ■
実は僕、東京マラソンを初めて完走できたのは、小出義男監督の本を読んだからなんです。「なるべく前半は押さえていけ」と、プロの立場からペース配分についてアドバイスを書いていて、これを実践したらマラソンを完走できた。日本陸連がエリートアスリートを育成することで蓄積してきたプロの指導力は、大いに活用すべきです。
堀江 ■
僕も、小出さんに1回だけ習ったことがあるんです。
茂木 ■
それでうまくなったの?
堀江 ■
呼吸の仕方だけちょっと教えてもらいました。それと、うちのトライアスロンチームにも鬼コーチがいるんです。僕は練習しないのでダメなんですが、コーチと練習したうちのチームメイトは速くなっていますよ。ぼくらのチームは20数人のチームですが、みんなでお金を出し合って、毎月何回かコーチを雇って指導を受けています。一人2〜3千円くらいで雇えて、それで断然速くなるのですから、これは絶対オススメです。
早野 ■
そういうコーチのマッチングも、RunLinkの中でやっていきたいと思っています。
茂木 ■
日本陸連に所属したアスリートが、全員がスポーツ庁長官になれるわけではありませんからね。我々みたいな下々のモノに教えるという役割も担っていただけたら、と。
早野 ■
分かりました。お二人にアドバイザーをお願いして、本当によかったと思います。失礼ながら、こういった意見が一番大切だということを思い知りました。引き続きアドバイザーとしてよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

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